有効成分で説明できない漢方

2020年7月6日;
風邪や肩こりに使われる有名な漢方薬に葛根湯が有ります。
葛根湯の構成薬味は葛根、麻黄、桂枝、芍薬、大棗、生姜、甘草です。
有効成分をそれぞれ見ると、葛根はダイゼイン等のイソフラボン誘導体、麻黄はエフェドリン、芍薬はペオニフロリン、甘草はグリチルリチン・・・。
現在判明している有効成分を集めて葛根湯を造っても効きません。風邪にも効かず肩こりも取れません。何故でしょう。

グリチロンと言う慢性肝炎の医薬品が有ります。免疫を調節し抗アレルギー作用、抗炎症作用があります。
肝臓の炎症を抑え、肝細胞を増殖し、抗発がん効果があり、肝機能を改善します。

グリチロンは漢方薬の甘草から造られます。
甘草からグリチルリチン酸を抽出します。更に化学的に生合成しグリチロンが出来ます。
肝機能改善作用は、化学的に製造されたグリチロンより、元のグリチルリチン酸の方が効果が高いそうです。
更にグリチルリチン酸より、元の生薬の甘草の方が肝機能改善作用が高いと言われています。

漢方薬の川芎と当帰は同じ血虚(貧血、低血圧、黄体機能低下等の病態)に使用する薬味です。
定性分析をすると同じ成分ピークを示し鑑別が出来ません。
同じ成分の川芎と当帰ですが、漢方では川芎は上焦(鳩尾から上)に使い、当帰は下焦(臍から下)に使います。
川芎はの香りは強烈(川芎を置いてゴキブリ避けに使う場合もあります)、味は舌を刺激します。
当帰は甘い良い香りがし、食べると美味しいです。成分が同じでも2つの薬味は香りも味も異なります。

当帰芍薬散と言う漢方薬が有ります。元々は妊娠中の腹痛に使う漢方薬です。
現在は不妊症や貧血、腎炎、生理痛、生理不順など幅広く使われている処方です。
何故か、女性には効きますが男性には効かない漢方薬です。

漢方薬には男性にしか効かない漢方薬(例;柴胡加竜骨牡蠣湯)、女性にしか効かない漢方薬(例;加味逍遙散。肝硬変で女性ホルモンを代謝できなくなった男性には使用)など複数あります。

私達のような現代薬理学を学んだ人間は、当帰芍薬散の構成薬味である当帰の成分は精油成分ブチリデンフタライド、芍薬はペオニフロリン、白朮はアトラクチロン・・・。それ故「当帰芍薬散の効能・働きはこうだ」と考えます。

私の師匠の故入江正先生は当帰芍薬散証(証とは病態)の患者さんを針1本で治療しました。その時、私は愕然としました。針に当帰芍薬散の成分は関係ありません。
私が20年かけて学んだ当帰芍薬散の当帰の成分は?芍薬は?白朮は?・・・、関係ない、無駄だったのか。

判明している成分で、作用や効能を語る事はエビデンス(証拠・裏付け)が有り、誰でも納得できる素晴らしい医学「文明」です。
しかし、東洋医学にエビデンスは有りません。数千年かけて繰り返された人体実験により、副作用や効能が確かめられた疫学調査のデータであり結果です。
東洋医学の漢方・鍼灸・導引(導引とは整体、按摩、気功)の技術は、代々伝えられた経験医学「文化」です。
東洋医学にはエビデンスは有りません。しかし大量の人体実験によって学んだ「医道」が有ります。