漢方と蓄膿症

東洋医学理論

2023年10月17日。写真は福岡市福岡城コブシの花です。

蓄膿症、副鼻腔炎の漢方

蓄膿症、副鼻腔炎は風邪や花粉症、アレルギー性鼻炎が引き金で発病する事があります。体質的傾向では炎症性、化膿性体質の方が多いです。

なかなか治りにくい蓄膿症は、漢方薬による根本治療が適している疾患です。
漢方治療では、加味方で辛夷川芎や、桔梗石膏。合方では桔梗湯などを追加します。

急性の蓄膿症には葛根湯加川芎辛夷

最も有名な処方は葛根湯加辛夷川芎です。
急性期や上顎洞が痛いほど化膿していても、目の上の前頭洞の炎症が少ないと効果的です。

慢性期や前頭洞まで化膿している時は効きにくくなります。他の薬方が適応します。

コブシのつぼみ

蓄膿症で多用する辛夷は、モクレンの仲間で初春に白い花を咲かすコブシのつぼみです。
刺激のある辛さがあり五味は辛です。花が咲く前の未開花のつぼみを漢方薬として利用しますので夷の名前が付いたと思われます。
夷は蝦夷、東夷などと同じく未開の意味です。

辛夷の消化器刺激

辛夷は、この辛みで胸焼けやムカツキなどの胃症状を訴える人がいます。

漢方薬を服用する時の煎じ薬を濃度を薄くします。
またエキス剤では、水をやや多めにコップ1杯服用します。冷服したり、食後に服用すると防げる場合が多いです。

様々な蓄膿症、副鼻腔炎

蓄膿症の患者さんでは、鼻閉だけが非常に強い方もいらっしゃいます。
肥厚性鼻炎も考えられます。

鼻閉には

鼻閉の強いタイプには葛根湯加味方である葛根湯加川芎3辛夷3黄芩3桔梗2石膏5大黄が奉功することが多いです。
便秘が無ければ大黄は不要の場合もあります。大黄は排便だけでなく、抗炎症で清熱作用として必要な場合もあります。

葛根湯加川芎辛夷に青皮製剤を同時服用でも同様にかなりの効果があります。

鼻茸

蓄膿症が長引くと、鼻茸が出来ることがあります。

鼻茸には適応処方にプラス、排膿散及湯を合方したり、薏苡仁10を加味したりします。薏苡仁と同様の働きのある野蒲陶の適応も考えられます。

鼻茸が無くても慢性状態が長引いている時は、薏苡仁の加味、排膿散及湯の合方で良くなることがあります。

蓄膿症へ他の漢方薬

また緑色の濃い鼻汁が大量に出る場合は辛夷清肺湯の適応されることも多いです。

蓄膿症の基本処方は葛根湯や柴胡剤、荊芥連翹湯、半夏白朮天麻湯、防風通聖散など証に合わせて縦横無尽に使い分けていきます。

蓄膿症の食養生

食養生として白砂糖は免疫力を下げます。化膿性には不可です。
油物は血滞、瘀血には不適です。もち米は炎症を増します。このような食材は出来るだけ減らします。
清熱解毒の働きの濃い緑の野菜や発散作用の葉野菜を多く摂ります。

化膿や炎症が強い時は香辛料は体表を温めます、特に唐辛子を避けます。炎症が進みます。

炎症が取れてきたら、逆に少し黒胡椒などの香辛料を使うと再発防止になります。
辛いは発散作用があり蓄膿症を予防します。辛夷の辛さによる発散を蓄膿症の治療に応用するのと同じ理屈です。

辛夷シンイ

コブシはモクレンの仲間です。
以前、北陸に行くサンダーバードの車窓から山に咲く野生のコブシの花を見て「何と美しい」と思いました。
モクレンより小ぶりの白い可憐な花ですが花の数が多く綺麗です。

コブシは漢方薬

コブシの花のつぼみを漢方薬に使用します。
辛夷と言う鼻炎や蓄膿症に使用される有名な生薬です。
処方では葛根湯加辛夷川芎、辛夷清肺湯などです。

つぼみが開花する寸前は香りがし、開花する為のエネルギーが1番強くなります。
辛夷の鑑別は大きく育ち、まだ閉じていて開く寸前のつぼみが良いです。
鼻の詰まりを開き解消する働きが強くなります。

鼻は顏の肺

東洋医学では、鼻は顔の肺と言われます。
肺の臓の五色は白、五味は辛です。
辛夷は白い花で味は辛く、香りが有るため上焦の顔の肺の鼻に効きます。

膿がある蓄膿症は

辛夷には抗アレルギー作用は期待できますが、抗菌作用は期待できず化膿には効果は無いです。
化膿がある時は桔梗を加味したり、枳実の入った排膿散及湯などを併用すると良いです。