漢方薬、民間薬による止血

東洋医学理論

2023年5月23日。写真は福岡市大濠公園の日本庭園です。

出血と漢方薬、民間薬

漢方薬は一般に慢性病に使用すると思われています。しかし急性疾患に対し発達したのが漢方医学です。
風邪や食中毒、感染症などの急性病に対し理論化されたのが漢方の古典である傷寒論です。

出血に使われる漢方薬と民間薬

今回は怪我や吐血などの出血に対しての漢方薬と民間薬をご紹介します。

黄解散

出血で有名なのが黄解散です。
上焦、胸から上方に使うことが多い処方ですが、下半身や怪我などの出血にも使用します。胃潰瘍の吐血や脳内出血にも使われます。手術前に服用すると出血が最小限に抑えられるそうです。

黄連解毒湯

黄解散を湯剤、煎じ薬にしたのが黄連解毒湯です。
黄解散に比較しマイルドな働きです。
同じ処方であれば散剤はシャープで、湯剤、煎じ薬はややマイルド、エキス剤は効力が落ちるのが一般的です。漢方薬は病態あるいは処方ごとに散剤、丸剤、湯剤と最も効力が高い剤形を選択していきます。

温清飲

血虚があれば黄連解毒湯に四物湯を合方し温清飲にします。

三黄瀉心湯

最も強いのが三黄瀉心湯で煎じ薬です。
三黄瀉心湯を更に強力に使用する場合は、煎じずに振り出しにします。熱をかける時間を短くし散剤に近くなります。
出血が激しい場合や緊急時には三黄瀉心湯の処方に熱いお湯をかけ紅茶のように振り出しにて使います。

煎じる時間で成分が変わる

日本茶でもそうですが、1煎目と2煎目、3煎目と味が変わります。
熱をかける時間が短いと瀉の成分が早く抽出され、熱をかける時間が長いと補の成分が抽出されてきます。日本茶では収斂作用のあるタンニンなどが時間を掛けると抽出されます。

芎帰膠艾湯

上焦の出血の黄解散に対し、下焦の出血には芎帰膠艾湯を使用することが多いです。子宮出血や痔や肛門からの下血に使用します。
応用として切迫流産などにも使用します。

温経湯

女性の不正出血には温経湯を使用する頻度が高いです。

その他、出血に対しては漢方では多くの薬方が使われます。

田七人参

伝承薬では三七人参、田七人参が有名です。
外用の場合は切り傷や鼻血など一瞬で出血が止まります。ベトナム戦争時にベトナム兵が使用しているのをアメリカ軍が見つけ有名になりました。
内服でも止血の効果があります。

民間薬

日本の民間薬では因幡の白兎に出てくる蒲の穂を外用として使います。漢方名は蒲黄です。
他にヨモギの生の葉を止血の外用として使います。ヨモギを乾燥すると漢方名は艾葉と言い内服に使用します。艾葉の葉の線維を除いたのがお灸で使用する艾です。
また道端に雑草として生えている血止草も葉の生汁を傷口に付けると直ぐに止血します。

黄解散と黄連解毒湯

黄連解毒湯は黄連黄芩剤ですので瀉心湯類になります。
強実証の三黄瀉心湯、実証の黄連解毒湯です。赤ら顔でのぼせ症、体力があり出血傾向があります。

炎症と充血を取りますので、鼻血や高血圧、イライラなどのストレスを抑えます。
脈診では滑脈で数、頻脈のことになります。

黄連解毒湯を散剤にしたのが黄解散です。
湯剤は、散剤よりややマイルドです。エキス剤は更にマイルドです。ガスクロの分析ではエキス化の過程で成分自体が異なってしまうとの報告もあります。
黄解散と黄連解毒湯は効能は同じです。脳充血などには黄解散加大黄とします。

湯剤と散剤の分量比

黄連解毒湯の湯剤は1日量が、黄連1.5、黄芩3、黄柏1.5、山梔子2。又は黄連1.5、黄芩3、黄柏3、山梔子3です。
黄解散は黄連1、黄芩1.5、黄柏1、山梔子1を散剤にします。総量4.5グラム出来ますが1日量は3グラムです。

散剤の1日量は一般的に湯剤の3分の1量と言われます。原料生薬によっては4分の1から5分の1の場合もあります。

黄連解毒湯と黄解散の1日量を比較すると
黄連は2分の1量弱
黄芩は3分の1量
黄柏は2分の1量弱から4分の1量
山梔子は3分の1量から4分の1量
になっています。

大黄と石膏の分量比

散剤に於ける他の生薬の分量を見ると
大黄は湯剤に対し散剤になっても殆ど1日量は変わらないです。やや少なくなるだけです。湯剤の大黄1グラムは散剤では大黄末0.9グラム前後です。
湯剤の石膏量は散剤になると約10分の1量強になります。湯剤の石膏5グラムは散剤で0.6グラム前後になります。

生薬の性により湯剤と散剤は配合比率が異なります。
これらは口伝と経験に従います。

家伝の民間療法

私は鹿児島市内で生まれ育ちました。父と母の田舎は鹿児島の国分、隼人です。

潰瘍に梅干しの種

鹿児島の大隅地方、鹿屋の年配の知り合いが胃潰瘍になったことがあります。
その方は病院からの潰瘍の薬は飲みませんでした。
潰瘍には「これが一番」と梅干しの種を噛まずに飲んでいました。
喉に詰まるからと通常の梅干しではなく、小梅の梅干しの種を食後に3から4個必ず飲んでいました。
1ヶ月ほど飲み続け、病院の検査では潰瘍が綺麗に良くなっていたのです。その後、再発もされなかったです。
糸練功で梅の種で潰瘍部分を診ると、確かに潰瘍の反応が消えるのです。驚きでした。

座骨神経痛にコチゴロシ

宮崎の都城にお住まいの患者さんが木の棒を持ってきました。
これは「コチゴロシと言う木です。これを煎じて飲むと坐骨神経痛の痛みが取れるのです。」
更に「バラを太く大きくした様な木ですが、棘が太く、子牛がこの藪に入り込むと生きて出られないのです。だからコチゴロシ、子牛殺しと呼ばれています」と仰いました。
現在もこのコチゴロシの木は太陽堂漢薬局の陳列に並んでいます。
糸練功で診ると確かに坐骨神経痛に反応するのです。