生姜も漢方薬

東洋医学概念

2023年6月27日。写真は熊本県南小国町阿蘇山、秘密の紅葉名所、マゼノ渓谷です。

医食同源の生姜

以前、韓国に旅行に行きました。福岡からは水中翼船が韓国の釜山まで出ています。快適な船旅でしたが、連れが少し船酔いをしてしまいました。
韓国からの帰りも水中翼船です。帰国前に韓国の薬局で船酔いの薬を購入しました。ドリンクの船酔い薬、中身は濃いめの生姜水です。驚きです。
これが効果が有り、連れは船酔いをすることもなく無事に旅を終える事が出来ました。

韓国では医食同源の通り、化学薬品の酔い止めではなく漢方薬として生姜を使っていました。

生姜の歴史

生姜は、漢方薬名はショウキョウと言います。
生姜は2000年以上前から漢方薬として使われています。漢方薬として使われる生姜は本来は小生姜です。
奈良時代以前に漢方薬として小生姜が日本に渡ってきたと言います。正倉院に残る漢方薬の生姜は小生姜だと思われます。

その後、江戸時代に大生姜が日本に入ってきて食用となっています。
現在、日本での生姜は殆ど大生姜です。小生姜は1部の地域に残るだけです。
日本のスーパーに並んでいるのは、小生姜ではなく大生姜が殆どです。

大生姜と小生姜

大生姜は表、身体の表面を温め発表、発散の働きが強いです。
太陽病の葛根湯や吐き気などには小生姜より大生姜が効果的です。
逆に裏、体の内側、深い部分を温める働きは小生姜に比べると大生姜は弱いです。
小生姜は表も温めますが、裏を温める働きが更に強いです。

漢方薬の小生姜

製造や処方で使用する生薬の乾生姜の場合、大生姜はやや白っぽく、小生姜は黄色味が強く感じます。味も小生姜の方が辛みが強いです。

漢方薬を製造する時に大生姜で造った漢方薬では胸焼けがする人がいます。小生姜に切り替えると胸焼けが消失することがあります。小生姜の方が辛みが強いからだと思われます。
酒客は甘みを好まざるものなり
漢方薬の甘みを小生姜で消しています。

漢方薬は本来は小生姜

漢方太陽堂で使用する生姜は小生姜です。
太陽病の表寒が強い場合は、生姜による発汗が必要です。その場合は大生姜の方が良いのだと思います。

しかし漢方太陽堂では表寒に対しても伝統的な小生姜を使います。漢方薬の服用時に生姜汁を数滴入れる方法でも発汗を助ける事ができます。

また発汗に対して大棗を多めにすることで汗腺を緩め発汗しやすくする事もできます。
更に体力のある人では石膏を加え、桂枝、麻黄、石膏の組合せで発汗を促します。

生姜の漢方薬としての薬効は

  1. 漢方薬で他に配合されている半夏などの毒消し目的で使われます。
  2. 脾の臓、胃腸の機能を高め治癒力を増す目的で大棗、生姜、甘草の組合せが傷寒論を原典とする古方処方の基本です。
    古方処方の基本である大棗、生姜、甘草の組合せは
    大棗はブドウ糖様作用。五味の甘みで、脾の臓を補い心身ともに緩めます。
    五色では、赤色の大棗は心の臓にも配当される代表薬味です。心を瀉し相生関係で肝の臓、胆の腑も瀉します。
    生姜は胃腸の神経系を調節します。
    甘草は胃腸に対するアレルギーを緩和します。
  3. 吐き気を抑えます。
  4. 血流を良くし体温を上げ、表、筋肉、皮膚などでは発汗、発表を促します。裏、内臓では新陳代謝を活発にします。

鎮嘔剤としての生姜

生姜は治嘔の要薬なりと言われます。
水毒の上逆による吐き気を抑えます。おなじ理屈で吃逆などにも使用されます。

生姜で吐き気を抑える処方に幾つかあります。
小半夏加茯苓湯、乾姜人参半夏丸、生姜瀉心湯などです。
陽証の場合は小半夏加茯苓湯。陰証の場合は乾姜人参半夏丸を使用します。
どちらも生姜を擦り、絞った生姜汁を数滴入れ冷服すると効果が増します。

吐き気がある時は人肌より熱い飮食は、漢方薬に限らず吐き気が増幅されます。吐き気がある時は他の漢方薬も必ず冷服します。

吐き気で食事が摂れない時は、食前の30分位前に服用すると吐き気が軽くなり食事が摂れます。
また生姜汁ではなく市販のチューブの生姜でも効果が有ります。