芍薬の不思議

2021年7月29日;(写真は 箱根湯本 須雲川です。)
「立てば芍薬、座れば牡丹」
芍薬と牡丹は花が似ていて判別しにくいです。見分ける方法として芍薬は上方に伸び花が咲き、牡丹は上に伸びず下側に花が咲きます。「立って花が咲く芍薬、座って花が咲く牡丹」の意味です。

芍薬の根は非常に多くの漢方薬に使用されています。
婦人科に用いられる有名な当帰芍薬散にも入っています。この当帰芍薬散を服用し吐き気、ムカツキ、腹痛を訴える方がいらっしゃいます。
「芍薬は線維が非常に多いため、それが原因だ」と考えるのが漢方界の一般的な見解でした。
しかし同じように白芍薬が入っている桂枝加芍薬湯では吐き気、ムカツキ、腹痛は生じません。

当帰芍薬散の白芍薬1日量は「経験・漢方処方分量集」では4g、「薬局製剤」で6g、出典で異なりますが4~6gです。
桂枝加芍薬湯の白芍薬1日量は通常量6gです。当帰芍薬散よりやや多いです。

芍薬4~6g程度の線維質を野菜で食べたくらいで吐き気・腹痛が起きるのでしょうか。
芍薬の線維が問題であるなら、芍薬量が多い桂枝加芍薬湯の方が吐き気やムカツキ、腹痛が起きるはずです。

では何故、当帰芍薬散で吐き気やムカツキ、腹痛が起きるのでしょう。
当帰芍薬散には「当帰・川芎」の血剤が入っています。
東洋医学の病因である気血水の血毒は油脂との関係があります。多くの駆瘀血剤には油性成分が含まれます。「似臓補臓」の理論通り「油の毒は油で解消」します。
似臓補臓に関しては血毒の原因とはをご覧ください。

油性成分を含む血剤を服用すると、油性成分を消化するため胆汁の排泄作用が増します。
体内の油を排泄するのは胆汁です。
血毒を解消する漢方薬は、血毒の原因の油を除き排泄・処理します。当帰・川芎だけでなく桃仁などでも同じことが起きます。

当帰芍薬散では「婦人の腹痛」を除くため赤芍薬ではなく白芍薬を使用します。
「血剤による胆汁の排泄」+「白芍薬により胆管が緩む」ことで胆石・胆砂・胆泥が流れやすくなり、腹痛や油脂の消化不良による吐き気、ムカツキ、軟便、腸内異常発酵などが起きると考えられます。
血剤だけでも胆汁は流れやすくなると思いますが、苦み剤の黄連・黄柏・黄芩・山梔子・茵蔯なども利胆作用があります。特に白芍薬との組合せには気を付けないといけません。