季節に合わす漢方

東洋医学概念

2023年11月17日。写真は広島県原爆ドームです。

季節と医食同源

季節に合わせ旬の物を食べるのが食の基本、食養生です。
春には春の旬の食べ物、夏には夏の旬の食べ物。季節が変われば食は変わります。

季節と漢方

では季節が変わっても漢方薬は同じ物を飲むのでしょうか。

季節に合わせ肉体は変化していきます。その肉体に合わせ食も生活も変化させます。
漢方薬も肉体の変化に合わせ、季節で変化させるのが好ましいです。
まさに医食同源です。

季節と腸内細菌叢

腸内細菌叢は、気温が上昇する夏に活発に成ります。
大黄などの瀉下剤が効きやすくなります。夏場は瀉下作用の漢方薬の分量を減らす方向で考えていきます。

気温が上昇した夏には、身体を温める漢方薬を減らし、清熱作用の漢方薬を増やします。

冬には気温が下がります。身体を温める漢方薬の附子剤などを増やし、清熱作用の漢方薬を減らします。

季節と湿度

春から夏にかけ気温の上昇と共に、湿度も上がります。湿気に対し燥の働きの漢方薬を増やします。
寒くなると湿度が下がります。気管支や肌を潤わすため潤の漢方薬の分量を増やします。
麦門冬湯に滋潤作用のある玄参などを追加したり、麦門冬を増量したり、潤いのつく食養生を増やします。

その他、年齢や体重の変化に合わせ漢方薬は変化していきます。

漢方生薬の採取時期

漢方薬の採取の時期も季節と生薬ごとに決まっています。

千金翼方

千金要方を書かれた孫思邈が晩年に集大成した千金翼方、巻第一採薬時節第一には
其の薬を採取する時節を知らず
艾葉は三月三日
麻黄は七月七日
丹参は五月
車前子は五月五日
決明子は十月十日、中略
と細かく記載されています。

民間生薬は葉物が多く、漢方生薬は根物が多い場合が殆どです。

根物の採取時期

植物は夏に沢山の日光を浴びて栄養分を根に蓄えます。その栄養分で次の春に芽を出します。
根物の生薬は地上部が枯れた時が最もエネルギーが貯まっています。その時期に採取します。
山薬や葛根、人参など多くの生薬があります。

花も漢方薬として使います

花は満開時はエネルギーを使い果たした結果で一番美しいです。
蕾からまさに花を開かせようとする開花初期が最もエネルギーが強いと考えられます。菊花、辛夷などです。

生薬市場には大きく開いた菊花も多いです。安価ですが精油が薄いため香りが少なく効果は薄いと考えられます。

民間薬に多い葉物も新芽が良いです

動物や昆虫は新芽が大好きです。

実物は動物や鳥が食べる完熟した時が採取時期です。
実物は降の働きがあると東洋医学では考えています。完熟していない実はまだ落ちません。落ちる寸前の完熟した実が降のエネルギーが強いと考えます。
枳実、大棗などです。

種子も実物と同じ降の働きです

動物や鳥が実と一緒に種子も食べ、排便で別の場所へ種子を拡散していきます。

東洋医学では完熟した実物の内なる種子が降のエネルギーが強いと考えます。
紫蘇子、車前子などです。

蝉退、セミの抜け殻

蝉退は蝉の抜け殻です。漢方薬として使用します。

蝉退の鑑別

蝉の抜け殻でも地面に近いものは殻が厚く質が悪く下品です。
木の上の高い所に付いた抜け殻は殻が薄く良品と成ります。

蝉退の作用

蝉退は抗痙攣、鎮静作用、神経節遮断作用などが報告されています。

漢方では血毒に対応し、熱性の痙攣を収めたり、アレルギーを抑制したり解毒作用、清熱作用として使用されます。
皮膚病に多用する消風散の漢方薬味です。

グルテンアレルギー

小麦のグルテンアレルギーや牛乳のカゼインによる遅行性アレルギーによる精神神経症や皮膚炎、胃腸病などが報告されています。

以前にご報告しましたが、大黄牡丹皮湯の働きから考え、冬瓜子によって腸内のグルテンやカゼインが除かれるのではと考えられるとご報告しました。
冬瓜子は瘀血に対してだけではなく、腸内の清掃をする働きもあると推測しています。

グルテンアレルギーと蝉退

グルテンアレルギーの反応がある患者さんを糸練功で毎月調べていると、毎月少しづつグルテンアレルギーが改善していたことがあります。
この患者さんには冬瓜子を出していませんでした。飲んでいたのは消風散です。

消風散の構成薬味にグルテンアレルギーを改善する薬味があるのではと考えました。調べていくと蝉退でグルテンアレルギーが改善することが分かりました。しかも体質改善をするようです。

ただ蝉退には油性成分があります。長期に使うのは慎まなければいけません。