痛みの漢方治療と瞑眩

東洋医学理論

2023年9月29日。写真は大分県由布市庄内町の男池の湧き水です。

坐骨神経痛の漢方治療

坐骨神経痛の漢方治療の適応は、一般に本人さんが壁につかまってでも自力で歩ければ治せると言われます。
私は自力で歩けず息子さんに背負われて来たご婦人を治した経験が有ります。一概に自力でとは言えないかもしれません。

坐骨神経痛の特徴的な改善

坐骨神経痛の漢方治療をしていると不思議な現象に当たります。

痛みが上から消失

あれほど痛かった腰の痛みが消失し、太腿が痛くなります。
太腿の痛みが消失すると、膝付近や脹脛が痛くなります。
脹脛の痛みが消失すると、足先が痛くなります。

改善に伴い、上の方から下の方へ痛みが取れていきます。
患者さんによっては、痛くなかったところが痛くなってきた、痛みが下がってきていると訴える方もいます。

痛みの次に痺れが取れる

痛みに続き痺れが取れていきます。
最後に足先から痛みと痺れが取れたら漢方治療の終了です。

痛みは再発しない

漢方治療をすると、椎間板ヘルニアであっても、脊椎すべり症、脊椎分離症であっても、脊柱管狭窄症であっても、まず再発しない事が多いのです。不思議です。
東洋医学や漢方が不思議なのか、人間の身体が不思議なのか、自然が不思議なのか、いつも考えさせられます。

腰痛や座骨神経痛の養生法

漢方治療中は出来るだけコルセットをはめます。圧倒的に治療期間が短縮します。
治療終了後はウォーキングなどの運動をし再発を防ぎます。腹筋と背筋を鍛えるのも再発防止になります。

またお相撲さんの四股のように、両足を広げ股関節を広げ、お尻をトントンと地面に向け落とします。これだけで軽い腰痛は取れます。これも再発防止になります。

リウマチの漢方治療

リウマチを漢方治療すると再発しにくいです。思い出深い患者さんがいます。

お箸も持てないリウマチの男性

50代の男性のリウマチの漢方治療をしました。指が変形し手首も変形していました。
手首が変形し手を伸ばせません。指の変形で食事の時もお箸を持てませんでした。
炎症反応のCRPも8くらいだったと思います。痛みが激しく病院の治療も受けているとの事でした。

漢方治療でリウマチが全快

漢方治療をし始めました。半年ほど過ぎても変形も改善せず痛みも取れませんでした。しかしCRPは毎月少しづつ低下をしていました。
CRPが1を切った頃、初めて痛みが軽快したのです。その後も漢方薬を続け1年以上が過ぎた頃、あれほど変形していた手首と指が見た目に違和感が無い位に改善したのです。食事の時もご自分でお箸が持てるようになりました。

変形していた手首と指

変形が良くなることは考えにくく、炎症と激しい腫脹だったのだと、その時に気づきました。
主治医の整形の先生からも「漢方薬を何を使ったか教えて欲しい」と聞かれ答えたのを覚えています。

リウマチは膠原病の1種

  1. 指の第2関節から痛みが始まる。
  2. 左右対称性である。
  3. 朝方に指が強張る。

などの症状を感じた時は病院での検査が必要です。
RA因子と言われるリウマチ因子が無くてもリウマチの場合があります。逆にRA因子が有ってもリウマチでない人もいます。

リウマチの進行

急性期と慢性期が交互に来ますので慢性期でも油断は禁物です。
親指まで犯されていると、かなり進行している可能性があります。リウマチ性の心臓弁膜症を併発する可能性もあります。

好転反応の瞑眩

漢方では治療による好転反応を瞑眩、読み方はメンケンと言います。メンゲンではありません。
気功に似た言葉で偏差と言う言葉がありますが、こちらは好転反応ではなく副作用の1つです。

瞑眩は治療初期

瞑眩は教科書的には服用後1から3日以内に起きると言われています。私は5日目に起きた瞑眩反応の経験がありますので3日以内とは限らないかもしれません。ただ治療の初期にしか発現しない反応である事は間違いないです。

アレルギーなどで身体に合わない副作用を好転反応と言われる事も有りますが、瞑眩と副作用とは異なります。

瞑眩は何故生じる

漢方薬はその患者さんごとに合わせて作ります。それがピッタリと合わせ過ぎた場合に瞑眩は生じると言われています。1人の漢方家で瞑眩が出現できるのは一生に数回だと言われています。
糸練功が出来ると、より正確に薬方を合わせられますのでもっと瞑眩の頻度は高くなります。

瞑眩の症状

瞑眩が出ると今までに経験したことが無い程の症状がでます。
皮膚病で漢方治療を行うと皮膚病が酷くなったり、坐骨神経痛の漢方治療をすると一時的に痛みが激しく成ったり、不眠症で漢方薬を服用すると逆に全く眠れなくなったりなどの症状が出ます。

主訴以外の瞑眩症状

また主訴以外の症状が酷くなる人もいます。
桂枝加竜骨牡蠣湯証には不眠症や鬱状態、痺れや疲労感など様々な症状が出る可能性があります。
患者さんが痺れの改善目的で桂枝加竜骨牡蠣湯を服用し、今まで無かった不眠症が瞑眩として出る事もあります。
桂枝加竜骨牡蠣湯証の症状なら主訴以外でも好転反応として出る可能性があります。

瞑眩が出ると改善が早い

瞑眩の症状は1から3日で消失します。皮膚病の場合、瞑眩が出るのは1から3日ですが、その症状が引くのに数日以上かかります。
瞑眩の出た患者さんは急速に改善が始まります。通常の治療の数倍の速さで改善していきます。
「溝掃除を少しづつするのが漢方治療。瞑眩はゴソッといっぺんに掃除するのに似ている」と表現される先生もいらっしゃいます。