駆瘀血剤の使い方

東洋医学理論

2023年9月26日。写真は熊本県南小国町阿蘇山、マゼノ渓谷の奥にある滝です。

桃核承気湯と通導散

当薬局の相談専門の先生より
「先日。先生、私のこと。は通導散を使われました。古方の桃核承気湯、後世方の通導散、どちらも実証の瘀血の漢方薬です。通導散と桃核承気湯を使い分けされていますが、どのように使いわけしたら良いのでしょうか」と質問されました。
確かに古方派の桃核承気湯と後世派の通導散、どちらも強実証の駆瘀血剤です。

構成生薬から観た桃核承気湯と通導散

桃核承気湯は
メインの働きとして

  • 上気。気の上衝に対応する桂枝、甘草
  • 駆瘀血作用で下焦に働く桃仁
  • 瀉下作用。潤して瀉する芒硝、清熱して瀉する大黄の組合せです。

通導散は
メインの働きとして

  • 気滞。気のうっ滞、気塊を除く枳殻、厚朴
  • 駆瘀血作用で五色が鮮やかな蘇木、紅花
  • 瀉下作用。潤して瀉する芒硝、清熱して瀉する大黄
    サブの働きとして
  • 利水作用の木通
  • 表に作用する精油を飛ばし、やや深い部分の発表をする陳皮。例として二陳湯、陳皮半夏
  • 血虚を補う当帰
  • 緒薬を調和する甘草の組合せです。

桃核承気湯と通導散の駆瘀血剤としての大きな違いは古方派、後世派ではありません。

上気と気滞、下焦と中焦

  1. 標治部として
    桃核承気湯は上気、気の上衝の桂枝、甘草。
    通導散は気滞、気のうっ滞、気塊の枳殻、厚朴。
    例えば、上焦まで気が上衝した統合失調症などでは桃核承気湯の使用頻度が高くなります。
    承気とは上昇した気を巡らす順気の意味です。
  2. 本治部として病因が同じ瘀血でも
    桃核承気湯は下焦の桃仁。
    蘇木、紅花は五色が鮮やかなため下焦の桃仁に比べ裏、下焦より少し浅い部分に作用します。

私個人としては、下焦の瘀血では桃核承気湯。中焦や消化器、内臓系の瘀血では通導散を使用することが多いと思います。

子宮筋腫の漢方治療

子宮筋腫は子宮に出来る筋肉性の良性の腫瘍です。
筋腫があると生理量が増えたり不正出血が生じやすく貧血を伴う人も多いです。また閉経すると自然に筋腫が小さくなる人も多いです。

東洋医学では患者さんの拳の大きさまでが漢方薬の適応と言われます。複数個の筋腫がある場合は合わせて拳の大きさです。
筋腫の漢方治療では桂枝茯苓丸や甲字湯などの駆瘀血剤に別甲3グラム薏苡仁10グラムを用いる事が多いです。それに桃核承気湯を合方することもあります。

筋腫は陽証

体質、大宇宙の陰陽に関わらず、小宇宙である筋腫自体は陽証に成ります。
血虚体質、陰証の女性に出来た筋腫、陽証は、漢方治療で改善しやすいです。陰中の陽証。
実証で瘀血体質は、陽証体質の陽証である筋腫は、改善しにくい傾向があります。陽中の陽証。

陰中の陽証の筋腫

陰中の陽証の筋腫の場合、漢方薬による筋腫の改善に確実性が高まります。

ただ筋腫が改善した後に不正出血が止まらなくなる人もいます。婦人科に受診すると筋腫は見つからず、子宮内膜症と診断されることもあります。ピルなどを処方されたりもします。

このような時に当帰芍薬散加芍薬、或いは芍薬甘草湯合当帰芍薬散を服用します。数日で不正出血が収まる事が多いです。

筋腫による貧血

子宮筋腫の方は不正出血があります。そのため貧血を伴うことが多いです。

貧血の改善を考え当帰芍薬散などを併用すると、瘀血の逆である血虚改善の働きが強くなります。結果、筋腫が大きくなることも有りますので注意が必要です。

筋腫の漢方治療2、3ヵ月で改善しない場合は手術を考慮した方が良い場合があります。