漢方医学の病因と食養生

漢方食養生

2023年7月28日。写真は中国大理の古い町並みです。

食養生と気血水

漢方の病因、病気の原因には気毒、血毒、水毒が有ります。

食養生では入薬理論により食材の部位ごとに働きが異なると考えています。形象薬理学の一つです。例を挙げます。

食材による働き

  1. 辛みの香辛料や葉物、皮などは蒸散、発散作用があります。
    蒸散、発散作用はのぼせ上気や気の滞り気滞、浮腫み水滞などを解消する働きがあります。
    漢方薬では薄荷、蘇葉、白芷、羗活、桂皮、他です。
    食養ではワサビ、胡椒、ニンニク、ラッキョウ、ネギ、辛子、葉野菜、日本茶などです。
  2. 根菜類は弱った身体、気虚に元気をつける働きが有る事が多いです。
    漢方薬では薬用人参や黄耆、当帰。
    食用では山芋、サトイモ、ジャガイモ、サツマイモ、人参は火を通しアクを抜くなどです。
  3. 苦みやアクのある食材は清熱作用があります。主に血毒を清め消炎作用があります。
    漢方薬では黄連、黄芩、黄柏、他です。
    食養では玄米、豆腐のニガリ、ゴーヤ、茄子、セリ、ホウレン草、日本茶、ワラビ、タケノコなどです。
  4. 油こい物は血毒に働きます。逆に油こく無い物は気毒、水毒に働く傾向があります。
    漢方薬では柴胡、桃仁、牡丹皮、紅花、他です。
    油脂は熱性になる事が多く、食養では種油、ごま油、バター、マーガリン、牛肉、豚肉など肉類、脂ののったマグロ、鯖などの赤味の魚類などです。
    油こい物は血毒を解消する食材でもありますが、血毒を酷くする食材が多くあります。
  5. 日光の強い所で生育する物は血毒に対し清熱に働く場合が多いです。
    漢方薬では黄柏、柴胡、山査子、鶏血藤、紅花、檳榔子、茵蔯、決明子、他です。
    食養ではゴーヤ、茄子、レタス、トマト、ピーマンなど。
  6. 逆に日光の弱い所で生育する物は水毒や小腸の腑の免疫に働く傾向が有ります。
    漢方薬では霊芝、カワラタケ、サルノコシカケ、桑黄茸、茯苓、他です。
    食養ではマイタケ、エノキなどのキノコ類や菌糸体など。

これらの指標は、幾つかの例外を覚えれば簡単で分かりやすいです。
すぐに食養生として利用できる理論です。

気血水と簡易自己診断

気毒、血毒、水毒は専門家が診ないと判断出来ない症状と、自己診断でも判断出来る症状が有ります。今回は自己診断で判断出来る症状について書きます。

重篤な病が潜んでいることもあります。主治医の先生に大きな病気がない事を確認して頂く事も大事です。
また西洋医学の治療と食養生を併用することも可能です。
食材はご自分の症状から食養生にて選び、ご養生下さい。

気毒の症状

  1. 目の周辺を中心として、ほんのりピンク色に染まる。
    上気と言われる気の上昇です。発散作用の食養生が合います。また生活の養生としては軽い運動などで発汗すると良いです。
  2. ピンク色より少し赤味があり、頬を中心として染まる。
    下焦の瘀血が原因による上気の場合が多いです。顔がのぼせると同時に手足が冷える症状があると瘀血が原因と判断します。
    苦みやアクのある食材を多めに摂ります。出来るだけ油こい物や脂の多い牛肉やマグロなどは控え、野菜中心の食生活や玄米が合います。
  3. 取り越し苦労が多くて悩む、突き上げるような連続した咳が出ても、水分を摂ると治まるなどの時。喉に痞える感じが有れば気滞になります。
    発散作用の食養生が合います。最も効果の高いのは新鮮な紫蘇や大葉です。ただ梅干しの紫蘇は精油成分が抜け効果がありません。
  4. ヤル気が無い、動くと身体が怠かったり息切れがする。食後に横になりたい。寝汗をかく、微熱が続いているなどは気虚の症状の場合が多いです。
    食養生では根菜類を多く摂ります。特に臭いがしなくなったニンニクの醤油漬けがお勧めです。

血毒の症状

  1. 下焦の瘀血
    痔核がある、子宮筋腫が有ったり、左下腹部に痛みや抵抗がある、臍の周囲を押すと痛みがある、下肢静脈瘤がある、鏡で見ると舌下静脈が怒張している、舌に紫色の部分がある瘀斑などは下焦の瘀血の症状です。
    食養生では、苦みやアクのある食材、日当たりが良く日光の強い所で生育する野菜などを多くします。
    油こい物、油脂類を減らします。特に牛肉とマグロなど赤味の魚を減らします。
  2. 中焦の血熱
    脂溶性便、軟便で便器について水洗で流れない便が出る、胆石、胆砂がある、口臭がする、顔が充血している、アルコール性肝炎や脂肪肝がある、舌に厚い白苔や黄苔がある、などは中焦の血熱の症状です。
    食養生は、1番の下焦の瘀血と同じです。
  3. 下焦の血虚
    貧血がち、手足のみの冷えではなく全身的に寒がり、生理前から基礎体温が下がりだす、筋肉が柔らかい、めまい等は、下焦の血虚の症状です。
    食養生では1番の下焦の瘀血と逆になります。苦みやアクのある食材、日光の強い所で生育する物を減らします。
    根菜類や日光の弱い所で生育する物や身体に熱になるニンニクや赤味の魚、鶏肉などを増やします。

水毒の症状

水毒は身体の水分の異常停滞や偏在が問題となります。

起床時の顔の浮腫み、眩暈、水肥り、足の浮腫み。
舌を鏡で診ると舌の縁に歯型が付いていることがあります。歯切痕です。漢方で言う胃内停水の状態です。胃内停水は舌から食道、胃の浮腫みです。酷くなると胃の部分でピチャピチャと振水音が聞こえます。

水毒は非常に多くのお病気の原因になります。
食養生では蒸散、発散作用の物、特に火を通した葉野菜を多く摂ります。また日光の弱い所で生育するキノコ類も多く摂ります。
利尿作用のあるトウモロコシやウリ科の果物、野菜であるキュウリ、スイカ、カボチャ、メロンなどを増やします。

苦い物やアクのある物も利尿作用があります。身体から水滞を除きますが、身体も冷やします。熱症の人は良いのですが、寒がりの人にはお勧めできません。