湿度の高い日本の漢方

東洋医学概念

2023年11月21日。写真は大分県由布市飯盛ヶ城です。昔、この山にはお城が有ったそうです。そのまま山の名前に成っています。

日本人の特殊性

かってキノホルムと言う整腸剤であり下痢止めが有りました。
世界中で大量に使われ、安全性も確認された下痢止めでした。

日本に輸入され日本でも使われだしました。
整腸剤、下痢止めとして抜群に効いたそうです。
しかし後発の日本人のみで副作用が多発しました。そして使用禁止になりました。

中国で上薬の黄連

黄連は、砂漠地帯の乾燥した中国では上薬です。
上薬は誰が飲んでも副作用が出ない、長く飲めば長生きする漢方薬です。
黄連が、湿度の高い日本でも中国と同じ上薬として通用するには無理があります。

私達のDNAは私達が創造したのではなく、私達の先祖が経験に基づいて造ってきたものです。
他国で良い物も日本人には不明な場合があります。

日本の水毒

桂枝加朮附湯と言う漢方薬が有ります。
日本の古方派の吉益東洞が傷寒論の桂枝加附子湯に朮を加え創った処方です。水毒による痛みや神経痛に使われます。

吉益東洞は広島に生まれ京都で診療に従事しました。
京都は寒暖の差が激しく、蒸し暑く湿度の高い盆地です。そこでの患者さんは水毒が病因、病気の原因の病が多かったと推測できます。

日本は高い山が多く、川が多く湿度の高い国です。水毒が病因の病が起きやすい条件が揃っています。

日本の水毒と中国の血毒

20年程前に北京から中国内部へ向かったことがあります。北京空港を飛び立つと、北京の街のすぐ横まで砂漠が迫っていました。
中国は広大な大陸で、日本ほど山が多くなく砂漠地帯が多いです。湿度の低い大陸では、水毒の病は少なく血毒の病が多いと思われます。

日本と中国では違います。これも身土不二です。

蒼朮と白朮

朮はオケラと言います。京都の八坂神社のお正月のおけら祭りなどの神事にも使用されています。
また山菜として若葉を食用として食べます。
昔は押し入れに朮を敷き、お布団の除湿剤として使っていたとも聞いています。

水毒に朮

朮は漢方薬として、水毒に使用されます。
体表では、皮膚病や関節痛などに発表作用で水分を出し治療していきます。葛根湯加朮、麻黄湯加朮、越婢加朮湯など。
裏では胃内停水などの胃腸病や腎臓病など、利尿にて体内の水分を除きます。当帰芍薬散、六君子湯など数多くの漢方薬の原料になっています。

日本に自生の朮

日本には白朮が自生しています。
佐渡島に佐渡オケラと言われる蒼朮の純粋種が自生していました。現在は殆ど見られないとの事です。

白朮と蒼朮の違い

白朮は油が少なく食すと刺激も少ないです。
蒼朮は色が濃く油が多く、苦みと刺激があります。精油が多いのが良質で、木立蒼朮が推奨されます。精油が結晶化しカビのように蒼朮を包みます。

強すぎる蒼朮も存在

蒼朮の質によっては発表作用が強すぎるのか薬疹が出る方がいます。蒼朮の特徴である精油が強すぎるのは問題になります。強すぎるのはダメです。
原料の選品には注意が必要です。木立蒼朮の中でも色が濃すぎない、刺激が強すぎない蒼朮を原料として選品すると良いでしょう。

白朮と蒼朮は種が混ざりやすく雑種になる傾向があります。
私が若い頃の白朮は現在の白朮より色が白く刺激も少なかったと記憶しています。

漢方薬は野生品

漢方薬の原料には野生品と栽培品があります。
野菜などでもそうですか、露地栽培とハウス物では成分量に驚くほどの差があります。同じ物ではありません。

太陽堂漢薬局では漢方薬は野生品にこだわり漢方薬の製造をしてきました。野生品は副作用も少なく効果も強く感じます。野生品と栽培品では迫力が違います。

利水剤である白朮も野生品を私達は使ってきました。
最近の白朮は色が濃くなっています。香りも強くなっています。
40年前の白朮は、もっと色が白かったです。香りも薄かったです。香りが強いのは精油成分が多いからです。
精油成分は表の骨格や筋肉、消化器では胃などの浅い部分に使用する蒼朮の特徴です。
白朮はもっと深い裏や刺激に弱い粘膜の腎臓などに使用しますので、精油成分は少ない方が良いです。

物により栽培品が良い場合も

栽培品の白朮を鑑別しました。
40年前の白朮に近い白色です。香りも野生品に比べ薄く精油成分が少ない理想的な白朮に思われました。

糸練功で鑑別すると野生品の白朮は脾の臓以外に肺の臓と膀胱の腑に反応があります。
肺の臓と膀胱の腑は表に近い臓腑です。白朮は裏に使用しますので野生品には問題があります。
栽培品の白朮は肺の臓と膀胱の腑に反応はなく、脾の臓のみの反応です。理想的です。

ショックでした。白朮に関しては栽培品の方が害が少なく使いやすいと思われます。
白朮と蒼朮は直ぐに種が混ざり雑種になります。
他の漢方薬でも簡単に一山超え、種が混ざると言われます。野生の白朮は蒼朮との雑種に成りつつあるのかもしれません。
畑で作る栽培品は、雑種になり難い環境なのかもしれません。残念で驚きでした。