東洋医学から見た発熱と風邪

東洋医学理論

2023年11月7日。写真は熊本県山鹿市金剛乗寺の山門です。

発熱や風邪の注意点

発熱時の脱水

発熱をすると体温が上がり身体から水分が失われます。
高熱が続くと脱水になりやすくなります。特にお年寄りや小児では脱水を起こしやすいので注意が必要です。

小児は唇にサインが

小児の場合、発熱時に唇が乾燥してきたら既に脱水している可能性があります。また脱水により微熱が出る場合もあります。
発熱時には十分な水分補給が必要です。

風邪の後の年配者の咳

年齢が上がると身体の保留水分が減少してきます。皮膚も水分が減少してきて乾燥肌になりますが気管支も水分が減少します。

年配者の長引く咳

風邪の後に、年配者で咳が長引く事があります。お布団に入ったり、コタツで温まったり、お風呂で温まると咳が出やすくなります。

痰は濃く切れにくい痰です。痰を出すために激しく咳き込み、痰が排出されると咳が落ち着きます。
漢方では大逆上気と言い、顔が真っ赤になるほど咳き込む事もあります。

麦門冬湯証と竹葉石膏湯証

年配者に多い麦門冬湯証の咳です。

麦門冬湯に竹葉と石膏の方意を加えたのが竹葉石膏湯です。石膏量が10グラムですので清熱作用は非常に強く、より実証です。

寝汗

寝汗は体力が落ちている時にかくと言われます。東洋医学では虚証の虚熱と捉えられます。

通常は寝ている間に500ミリリットル程の汗をかきます。
この寝ている時の発汗量が多いのが寝汗、或いは盗汗です。

往来寒熱による寝汗

少陽病の往来寒熱では夕方の微熱を下げるため、虚証では遅い時間帯に発汗し寝汗となると以前に記しました。

また往来寒熱には虚実があるとも書きました。
更に往来寒熱には急性病の傷寒と、慢性病の雑病が有ります。

急性病の後の体力低下による往来寒熱の寝汗だけでなく、日頃から寝汗をかく人は、虚証で虚熱による慢性的な往来寒熱があると考えられます。

夕方の微熱を自覚出来ていない場合も多いです。朝方の体温と夕方18、17時位の体温を比べるのも一つの目安になります。

往来寒熱の食養生

虚証の往来寒熱は、高タンパク、低脂肪、高カロリーの食事が基本ですが、食養生では鶏肉や卵なども合います。韓国料理の養生食、参鶏湯などと同じです。
鶏の脂も重要で、鶏皮や鶏ガラスープなども食事に混ぜると体力が付いてきます。
植物性の薬味より動物性薬味の方が効果が早いです。

直中の少陰

東洋医学では、すべての病で病位が移ると考えています。

傷寒論と黄帝内経の違い

臨床医学である古方派では、太陽病から少陽病、次に陽明病、次に太陰病、次に少陰病、最後は厥陰病に病位が移ると考えます。

解剖学が基礎の内経では、太陽病から陽明病、少陽病、太陰病、少陰病、厥陰病の流れです。

臨床の病位

実際の臨床で少陽病から陽明病の病位の移りは有りますが、陽明病から少陽病の病位の移りは40年以上の臨床の現場で1回も観たことはありません。

陽明病から少陽病と感じる病態は、太陽陽明の合病から少陽病です。太陽陽明の合病の治療病位は太陽病になります。

直中の少陰

この病位の流れに沿わない事が急性病で生じることがあります。

直中の少陰と言われる流れです。発症の最初から少陰病に入ります。発症の最初ですので慢性病ではなく急性病にしか起きません。

症状は太陽病と同じく寒気と発熱です。お年寄りや虚弱な方に起こります。

判断に迷う少陰病と太陽病

少陰病は表裏寒で心臓も弱っています。
太陽病は表寒です。

太陽病と少陰病は表寒の状態は共通です。そのため症状が非常に似ていて鑑別が難しい事があります。
脈診や糸練功で確認しないと判断出来ない場合も多いと思われます。

太陽病と勘違いし麻黄剤を使用すると心臓負担が生じ危険です。
少陰病の代表である真武湯は、少陰の葛根湯とも言われる由縁です。

麻黄の毒を附子で消す

麻黄附子細辛湯を使用する場合、麻黄の副作用を附子で打ち消し中和します。麻黄は心臓を瀉し、附子は心臓を補います。
附子が加工附子の場合は麻黄の副作用を軽減できません。気になる時は炮附子を使い、長めに煎じます。