時代で変わる漢方と東洋医学

漢方雑記

2023年10月31日。写真は大分県豊後高田市天念寺の六所権現社。現在の身濯神社の鳥居です。

入手が困難な漢方薬

漢方薬の原料が30年程前から変遷してきています。
40年前に漢方を教えて頂き、師匠から生薬の見立てを習いました。
今まで、それに従い原料生薬を選別してきました。

栽培品の黄芩

40年前は考えもしなかった漢方薬の副作用も増えているように感じます。
生薬も、野生品から畑での栽培品に変わってきています。

黄芩なども野生品に比べ、栽培品はバイカリンの含量が多いです。同時にサポニンなども多いのかもしれません。

手に入りにくい漢方薬原料

阿膠などは、中国でのブームで化粧品の原料に使われ、価格が数10倍に跳ね上がっています。
甘草も西北甘草が中心になり、日本では東北甘草の入手が困難になりつつあります。

人件費の影響

中国での人件費が40年前の数倍になり、漢方生薬の価格も数倍になっています。
日本でも藤瘤や竹節人参など、高齢化や人件費の問題で採取する人達が減っています。それにより入手が困難な生薬が増えています。
中国の富裕層が世界中の牛黄を買い占め、これも価格が急騰しています。

劣悪な漢方薬

高騰した生薬価格を抑えるため市場には劣悪品が増えているのが現状です。
日本で使われる漢方薬の梔子は、染料の原料である水梔子が殆どです。本物の漢方薬の山梔子は僅かです。

食べ物や嗜好品にお金を出すが、漢方薬には出さなくなった、日本の市場
柴胡と言う名が付けば品質に関係なく、局方を通れば安い柴胡を求める業者
皮去り髭去り人参ではなく、髭人参でも低い有効性や毒性に関わらず、人参という名が付けば安い人参を探す現場。

将来の漢方薬

より良い原料生薬を求め、漢方仲間と鑑別の技を競い合っていた懐かしい時代がありました。
漢方医学を取り巻く環境が大きく変化しています。漢方薬の上品の原料が手に入りずらくなっています。

先人から受け継いだ東洋医学の伝統を再現できなくなった時
東洋医学をお教えくださった亡き師匠や、私自身が求める漢方が出来なくなった時
私は漢方薬を作り続ける事はしません。出来ません。

時代で移り変わる色の感覚

現代の私達が青色と言うとブルーを思い浮かべます。
東洋医学の青色は靑色です。丹石の色です。丹石は大きく分けると緑色と赤色の2種類が多いと聞いています。
漢方薬の丹参は赤い人参です。

緑の野菜を青野菜、緑の信号を青信号と読びます。
2000年前の靑はブルーではなく、緑だったのかもしれません。

東洋医学の古典、黄帝内経の色

東洋医学の理論である五行では、肝の五色は青になっています。
糸練功やOTオーリングテスト、入江FTなどで見ると、肝の腹診部や六部定位脈診の肝の脈診部である左関は、青色で反応せず緑色で反応します。

また脾の五色は、五行では黄色になっています。
腹診部の脾、脈診部の脾は、黄色では反応せず、黄土色で反応します。
黄土は、黄色の土なのでしょう。

時代が移り変わり、私達の感覚も変わっていってるのかもしれません。

東洋医学の診断

漢方医学の診断と西洋医学の診断は大きく異なります。
漢方医学の診断は証を決める事であり、西洋医学の診断は病名になります。

例えば、葛根湯証の診断は葛根湯で改善する、良くなる病態であるという意味、診断になります。
桂枝湯証は桂枝湯で、麻黄湯証は麻黄湯で良くなります。

小柴胡湯は西洋医学の病名では、感染症などの発熱、中耳炎、扁桃炎、咽頭炎、耳下腺炎、肺炎、気管支炎、肋膜炎、結核、肺気腫、肝炎、胆嚢炎、胃腸炎、円形脱毛、皮膚病など数多くのお病気の急性状態や体質改善に使用されます。

患者さんの病態を、事前の問診などの情報が無い状態で、糸練功やOT、FTを使い小柴胡湯証と判断した場合、西洋医学的な病名は何なのか判断できません。
中焦。鳩尾付近から臍付近の間にて、小柴胡湯証を呈していたから肝炎だとは言えません。胆嚢炎、胃炎、皮膚病なども考えられます。他に胆経の経絡の反応が出ている事もあります。

東洋医学の診断は病名では無いです

患者さんが「糸練功で身体を診て下さい」と言われる場合もあります。
事前の問診や症状などの情報の無い状態では、推測の範疇を出ず診る事は不可能だと考えられます。
糸練功は間中喜雄先生、入江正先生と代々引き継がれ完成した優れた技術です。しかし四診である問診、切診、聞診、望診の一部にしか過ぎないからです。