本や講演会で学べない、もう一つの漢方

2022年4月27日;(写真は 広島市 金光稲荷神社 です。)

私が漢方を始めた40年以上前、漢方の本や教科書は今のように多くは無かったです。当時の漢方は市民権を得ておらず、漢方は日陰の医学でした。

東洋医学会の構成も、薬剤師・薬系が5~6割、鍼灸師が3割、医師・医系が1割の時代です。東洋医学関係の講演会も殆ど皆無の時代でした。
日陰である漢方を志す少数派の人たちは、お互いに非常に緊密で仲が良かったと記憶しています。

その当時、先輩に街に連れていかれ、通行人を見て歩き方や行動、好みの服装、顔つきから「証(ショウ。東洋医学の体質的傾向)」を当てさせられます。ストリップに連れていかれ裸の女性を見て体形や肉の付き方から「証は何?」と聞かれていました。

また患者さんの声を聴き、顔を見て「証は?」と質問されていました。
咳を聞き、この咳は「半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)証」。この咳は「麦門冬湯(バクモンドウトウ)証」。この咳は「浅い咳」、この咳は「深い咳」と教えられました。
基礎医学である黄帝内経(コウテイダイケイ)の腹診(フクシン)ではなく、古方派の臨床に実用的な腹診も教わりました。

東洋医学の診断方法には四診があります。問診(モンシン)、聞診(ブンシン)、切診(セッシン)、望診(ボウシン)です。
教科書や講演会で学べるのは問診による治療です。
聞診、切診、望診は本や教科書では学べません。師匠より体感で教えてもらわないといけません。

自動車学校で、教科書で車の運転を学んでいるのと同じです。
実際にハンドルを回しアクセルを踏み、ブレーキを踏む体感をします。その後、練習しないと車の運転が出来ないのと同じです。

師匠である故入江正先生は、問診に基づき理論的に組む東洋医学の治療を、施術者側の身勝手で想像力豊かな「空想の漢方」と呼ばれていたのを思い出します。