白蜜と砂糖

漢方食養生

2023年4月28日。写真は福岡県糟屋郡新宮町立花山の国の天然記念物樹齢300年を超す楠です。

大理の白蜜ハクミツ

30年近く前に中国の大理に行ったことがあります。大理は大理石が取れる事で有名な町です。ヒマラヤの中腹です。
その4、5年前に大理は日本人に解放されたばかりでした。当時は殆ど観光客も日本人もいない町です。

白蜜を発見

大理には三国志に出てくるような古城があります。
大理城の門前に行商のおばちゃん2人組が白蜜を売っていました。白蜜は岩蜜とも言われる生薬です。
白蜜は失われた漢方薬と言われ蜂蜜の化石と思えば想像できます。表面には苔が生えています。
私も文献でしか知らなかった漢方薬の白蜜です。

公安に追いかけられる

おばちゃんと値段を交渉していると、おばちゃん2人組が白蜜を袋に入れ逃げ出したのです。後ろを見ると公安が2人走ってきます。
おばちゃん2人組が逃げ、白蜜の欲しい僕も一緒におばちゃん達と逃げました。2人の公安をやっと巻いて逃げる事が出来ました。
このおばちゃん2人組は営業許可を持たないモグリだったようです。ともあれ白蜜を手に入れ私は満足でした。

その後、知り合いの北京中医薬大学の教授達と車で移動中に白蜜を手に入れたことを話しました。
「それは凄い。私達も見たことがない」とおっしゃってました。

観光化された大理

数年前に再び大理を訪れました。観光客が溢れ五つ星ホテルが出来ていました。大理城の中の何も無かった石畳の広場には観光客相手の街が出来ていました。
白蜜は取りつくされ岩場の巣付きの新鮮な蜂蜜を岩蜜として売られていました。

漢方薬の白蜜

大理は亜熱帯ですが標高が2000メートルあります。温暖でお花が咲き乱れる地域です。
蜂が集めた蜜が岩の窪みに溜まり水分が抜けます。時が流れ蜂蜜は岩の様に硬くなり岩蜜になります。表面には苔が生えます。

白蜜の効果

白蜜は白いのが良品です。
白蜜、ハチミツの寒熱は平、潤です。潤肺潤腸と言われる滋潤効果があります。

八味地黄丸の構成薬味です。地黄や麦門冬、麻子仁などの燥の証に併用すると滋潤作用で効果が上がると考えられます。
血液も滋潤しますので脱水などの予防にもなります。

白蜜と糖尿病

平成薬証論の著者である京都大学の本草学者である渡邊武博士が顧問をされていた医薬品メーカの会長が糖尿病で入院されました。この医薬品メーカは誰でも知っている日本で1番大きな医薬品メーカです。

渡邊博士は蜂蜜をお見舞いに持っていきました。
会長は「俺は糖尿病だぞ」。渡邊博士は「蜂蜜は糖尿病の薬です」と答え、会長は蜂蜜で糖尿病を治されたと聞きます。

糖尿病に使用する八味丸は蜂蜜入り

糖が多い蜂蜜を使った八味地黄丸は糖尿病の漢方薬としても使われます。
血糖値が上がると血液の粘度は高まり脱水に近い状態、燥となり口渇が生じます。
糖が多く血液の粘度を高めるはずの蜂蜜が血液を滋潤し、結果として血液の粘度を下げると考えられます。

蜂蜜は糖分が多く、摂り過ぎると一時的に血糖値に影響しますので自己管理が必要です。
また強い殺菌作用があります。腸内細菌叢が乱れ下痢をする人もいます。
元々2000年以上前から漢方薬として使われています。摂り過ぎにはご注意を。

漢方薬として用いる砂糖

白蜜或いは蜂蜜を滋潤剤として漢方薬として用います。
前記の八味地黄丸だけでなく桂枝茯苓丸などの丸剤でも蜂蜜を用います。
桂枝茯苓丸も少陽病位ですが、方意は陽明病の瘀血に対する駆瘀血剤です。

蜂蜜は滋潤剤

蜂蜜の薬効は、甘みでマイルドにするだけでなく蜂蜜の滋潤作用を使います。

  1. 八味地黄丸、六味丸などの地黄剤。
  2. 陽明病。血液中の水分が減少している瘀血の方意である桂枝茯苓丸。
  3. 麻子仁丸。腸の水分が減少などに蜂蜜を用いて丸剤を造ります。

蜂蜜は滋潤剤として用います。
滋潤が目的の方剤を蜂蜜にて丸剤にし用います。江戸時代には口渇に対し蜂蜜を使った四苓湯の丸剤も有ったと聞きます。
丸剤を作るための蜂蜜ではなく、滋潤作用が目的で蜂蜜にて丸剤にします。

麦芽糖も漢方薬

蜂蜜以外に漢方薬として用いられる砂糖には膠飴が有ります。麦芽を発酵した飴です。

膠飴の効能

膠飴は微温、身体を僅かに温める。緩、緊張し過ぎた筋肉や痙攣性の消化器の筋肉を緩める。補、身体に力を付ける働きが有ります。

小建中湯などの建中湯類の構成薬味です。
膠飴は激しい痛みなどの急迫症状を除きます。また建中ですので中の胃腸を力強くする健の働きがあります。

食養生で黒砂糖は解毒

また食養生では黒砂糖が温、身体を温めるので、清熱炎症や身体の余分な熱を取り、また利尿作用が有ります。
食養生では黒砂糖を解毒目的で使用します。

食養生での解毒

解毒作用では他に蛸やイカ墨、苦みやアクのある食材なども使用します。
蛸は解毒、イカ墨は魚毒を消します。

清熱、利尿作用は小豆やウリ科、苦みやアクのある食材にも有ります。
寒熱や燥湿などを考え、ご自分の体調に合わせ使い分ける事が大事です。