肺がんに使用される漢方薬

東洋医学理論

2023年7月14日。写真はインドネシア、バリ島の夕焼けです。

肺がん

肺がんは発見しにくい悪性腫瘍の1つです。

肺の組織

肺は肺胞と呼ばれる空気の袋で構成されています。
腫瘍が増殖する時に肺胞の入り口を潰します。入口が潰され肺胞に空気が入らなくなると、肺胞は風船の様に潰れてしまいます。

肺がんは肺胞を潰す事を繰り返しながら増殖していきます。
その為、5ミリの肺がんは3センチ以上の肺胞が潰された結果だと言われます。
1センチの肺がんは10センチの胃がんに匹敵するとも言われます。

肺は肋骨に囲まれているため、1センチ以下の肺がんは発見しづらいそうです。

肺がんの症状と種類

肺がんで血痰や呼吸困難の症状が出る時は、太い気管支まで肺がんが進行し侵されていると考えられます。
また血液は肺を通し全身に送られます。そのため血行性の転移を起こしやすい病気でもあります。

肺がんは扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌、小細胞癌の順に進行速度が速くなり転移もしやすいです。
小細胞癌では太鼓バチ指という爪が曲がりそる症状が伴う事があります。

麦門冬湯

肺がんの咳には麦門冬湯が合うことが多いです。
また肺がんで胸水が溜まった時などは小陥胸湯や小柴胡湯との合方の柴陥湯を使うことが多いです。

麦門冬湯は麦門冬10、半夏5、粳米5、大棗3、白人参2、甘草2の6味の構成です。

麦門冬湯証の咳と痰

麦門冬湯は大逆上気の状態です。大逆上気は虚熱により気が上衝します。

虚熱により、痰は乾燥し粘っこい痰になります。同じく虚熱により肺は炎症します。虚熱により咽喉が乾燥し、喉がイガイガし咽喉不利が生じて声が枯れます。
また気の上衝により、咳の発作時は顔は赤くなるほど咳き込みます。

構成薬味の麦門冬、粳米、白人参は滋潤作用があります。濃い痰を潤し排出しやすくし、乾燥した喉のイガイガを治めます。
虚熱による肺の炎症と気の上焦による顔の赤みが強い時は、人参を竹節人参や髭人参に変えて使用することがあります。

麦門冬湯の人参の使い分け

白人参は、白参と呼ばれ甘い人参です。
脾の臓に配当され潤で升で温で補気作用が特徴です。

竹節人参や髭人参など質の悪い人参は苦いです。
苦みは心、心包の臓に配当されます。
苦みは燥で降の働きが強く涼で清熱作用で炎症を抑えます。

人参の甘みと苦み

甘い人参は甘、潤、升、温と。苦い人参は苦、燥、降、涼は働きが異なると言うか、真逆に近い働きです。

本草学と言われる東洋医学の薬理学書に人参は甘くて苦いと書いてあることが多いです。あまり質の良くない人参の味です。
苦みが増えるに従い質が落ちます。最高の人参には苦みはなく甘いだけです。

竹節人参、髭人参、質の悪い人参の苦みで、麦門冬湯証の虚熱の炎症を抑え、上気を下げます。
麦門冬湯には滋潤に麦門冬、粳米が入っていますが、潤の働きがやや弱まります。炎症が強いので虚実も少し変化します。

急性期と慢性期で異なる人参

麦門冬湯の構成薬味で考えると、咳が酷く、炎症や顔の赤みが強い時は苦みの人参が良いと考えられます。症状が落ち着いた体質改善に対しては甘い潤の白人参が良いと思われます。

薬用人参は人参サポニンが多いと苦みが増すようです。ジンノサイドが多いと甘みが増します。甘みと苦みで効果が異なります。
補気に使う人参は苦みが無く、出来るだけ甘い白参を使用します。

小陥胸湯

肺がんが進行すると胸水が貯まることがあります。

胸水の漢方薬

肺がんの胸水に小陥胸湯が適応することがあります。また小柴胡湯と合方し柴陥湯、小柴胡湯合小陥胸湯のこともあります。

小陥胸湯の適応

小陥胸湯は結胸に使われる処方です。
同じ傷寒論を出典とする結胸に使われる処方で大陥胸湯があります。大陥胸湯は陽明病位に近い実証です。
それより虚証で水毒がある胸中急迫の小結胸に用いるのが小陥胸湯です。

小陥胸湯は肺がんの胸水だけでなく肋間神経痛などにも繁用される処方です。
胸痛や心下の痛みなどを目標に、風邪、気管支炎、肋膜炎、喘息、肺炎、胃痛、胆石症などにも使用されます。

肋間神経痛は小陥胸湯、柴陥湯以外に柴胡桂枝湯加芍薬あるいは芍薬甘草湯合柴胡桂枝湯なども多用されます。その他多くの処方が有ります。