
2021年9月1日;(写真は大分県豊後高田市六郷満山の峰入り修行の寺院、千三百年前に建基された歴史の天念寺です。)
阿膠(アキョウ)と言う漢方薬があります。止血薬として有名ですが、血行を良くする働きや腎臓の糸球体に力を付ける働きもあると言われています。
山東省東阿地区にある井戸水で作った膠(ニカワ)、阿膠が最上品とされ山東阿膠の名前が付きました。
薬用には宝石のような透明感が有り、厚手の物が上品です。
加工したものに玉阿膠(タマアキョウ)があります。
玉阿膠は小麦や蛤(ハマグリ)の粉と阿膠を混ぜ火で炙りポップコーンのように膨膨させ珠を作ります。
蛤粉を使用し作った玉阿膠は止血効果が増強されます。体内のカルシウム平衡を改善するからだと言われています。
玉阿膠を作る時の蛤の殻は漢方薬名を文蛤(ブンゴウ)と言います。炭酸カルシウムやキチンなどが含まれています。五味は「鹹で潤し降ろす」働きがあり、清熱作用が有ります。
古事記には大国主神(オオクニヌシ)の火傷を蛤で治療したと記されています。
漢方の古典「傷寒論太陽病下篇」には激しい口渇に文蛤一味の文蛤散。同じく漢方の古典「金匱要略」には嘔吐後の口渇に文蛤湯(文蛤5、石膏5、麻黄3,甘草3,乾生姜1、大棗3、杏仁4)が書かれています。
いづれも文蛤の潤で清熱作用を用いています。
戦前までの日本の目薬は、蛤の殻の内側に漢方薬と梅肉で出来た赤いペースト状の目薬を塗り、蛤の上下の殻を閉じ密封し販売されていました。
使う時は蛤の殻の中で、目薬を水で溶かし眼にさしていたそうです。
阿膠が動物の膠(ニカワ)で酸性物質、目薬の梅肉も酸性です。蛤の殻はアルカリ性です。
酸性とアルカリ性の化学反応により、蛤の殻から抗炎症作用のある清熱成分を目薬として抽出しています。昔の人の経験による知恵は凄いですね。
※煮魚を作る時に梅干しをつんざいて入れます。魚の骨がアルカリ性です。
骨のミネラル(アルカリ)成分が梅干しの酸性により抽出され流れ出てきます。ミネラルも含んだ栄養豊かな煮魚が出来ます。
お魚の南蛮漬けも同じ理論の食文化です。