竜骨と牡蠣肉

東洋医学概念

2023年6月9日。写真は青山2丁目銀杏並木です。

竜骨リュウコツ

10年程前に重慶に行きました。目の前を流れる揚子江、長江の夜景が素敵でした。
夜景を見ながら、以前に揚子江の流域で竜骨が取れる山の写真を見たのを思い出しました。

竜骨はマンモスや脊椎動物の化石です。その山は山全体が竜骨の塊でした。その山をバックに作業員の方がサツマイモの2倍ほどの竜骨を舌に引っ付けても落ちない程、この山の竜骨は質が良い事をアピールした写真でした。

早速、現地のガイドさんに竜骨が取れる所を知らないか聞いてみると、「僕は生薬市場で働いていたから詳しい」との事。
翌日、バスで早朝に出発し5から6時間かけて竜骨が取れる場所へ到着しました。そこは恐竜の化石の発掘現場だったのです。
ガイドさんは竜骨を恐竜の骨と勘違いしたのだと分かりました。

竜骨は竜の骨と書きますが、恐竜の化石ほど古い物は使えません。
自慢げなガイドさんを信じたのが間違いでした。疲れて1日を無駄に潰した日でした。

北京原人が見つかったのは、北京市の竜骨山です。北京でも竜骨が取れていました。

竜骨の働き

骨には海綿状の小孔があります。スポンジの穴のようにスカスカ見える穴です。この小孔がシッカリしている古すぎないマンモスや脊椎動物などの化石が良い竜骨です。
小孔が有るため、良い竜骨は舌に付けると空気圧で舌から離れません。

竜骨の働き

竜骨には精神安定作用と収斂作用が有ります。
精神安定作用にて不眠や神経衰弱に使用します。
また収斂作用にて夢精や帯下、下痢などに利用されます。
竜骨は生で使用する生竜骨は精神安定作用が強く、焼いて使用する焼竜骨は収斂作用が強くなります。

竜歯

竜歯は歯の化石です。これも古すぎると効果が落ちます。市場にはエナメル質が残っていない竜歯も多いです。エナメル質が残っている竜歯が良いです。
収斂作用は竜骨の方が強いですが、精神安定作用は竜骨より竜歯が強いです。不眠や煩躁などに用いられます。

竜骨、竜歯、牡蠣肉の違い

竜骨と同じカルシウム等のミネラルを含んだ漢方薬味に牡蠣、牡蠣の殻があります。
竜骨の五味は甘で脾の臓。牡蠣の五味は鹹で腎の臓、膀胱の腑です。
腹診でも竜骨は臍下悸、牡蠣は臍上悸を目標にします。

牡蠣殻と異なり、牡蠣肉の五味は甘で竜骨と同じです。

牡蠣肉

牡蠣肉にはグリコーゲンやアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどが豊富です。欧米では強精剤として有名です。

牡蠣肉の働き

牡蠣肉には竜骨と同様に精神安定作用があります。統合失調症に牡蠣肉エキスで改善した論文も発表されています。
また豊富なアミノ酸やタウリンなどが多く、強肝、滋養強壮としても使われます。

牡蠣肉と竜骨

牡蠣肉は同じ脾の臓に属する竜骨と非常に似た働きがあります。
桂枝加竜骨牡蠣湯、桂枝甘草竜骨牡蠣湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、龍骨湯、竜骨一味など。
竜骨の補助や食養、代用として牡蠣肉を使うと効果が増します。

古典における牡蠣肉

最も古い東洋医学の文献集である医心方に蠣として効能が書かれています。
牡蠣は。中略。傷寒、寒熱、温瘧を主り、拘緩、鼠瘻、女子の下血、赤白、心痛、気結を除く。渇を止め、老血を除き、喉痺、咳嗽を療す。久しく服せば骨節を強くし、年を延ぶ」と記載されています。

以下の効能です。

傷寒。重篤な風邪など、感染症
寒熱。往来寒熱を呈するこじれた感染症
温瘧。熱の後に悪寒がするマラリアなど
拘緩。ひきつり、痙攣、癲癇発作など
鼠瘻。リンパ炎、るいれき
女子の下血。子宮出血
赤白。帯下
心痛。胸の痛み
気結。胸、喉の詰まり
渇。喉の渇き
老血。老廃した血液
喉痺。アデノイドなど
咳嗽。咳、痰

現在は牡蠣肉エキス錠が売られています。
製法で、傷がついた牡蠣からの抽出や、高温抽出、アルカリ溶剤などを使うなどすると収量も多くなりますが、高分子も抽出されてしまいます。

傷の付いていない大振りの栄養価の高い牡蠣肉を低温で時間をかけ低分子だけを抽出します。
不純物の入らない純粋な牡蠣肉エキスが出来あがります。低分子ペプチドなどの吸収が早くなり血中濃度も上がり易くなります。
低分子抽出は収率が悪くコストも高くつきます。日本では2社だけが行っていると聞いています。
手前味噌ですが、その内の1社が漢方太陽堂が勧めるオイスターキングです。