日本で使われる漢方生薬、牡蠣

漢方雑記

2023年11月10日。写真は手前が化石牡蠣を高温で焼いた焼牡蠣です。
古代の牡蠣の化石で殻が何層にもなり厚いです。奥に映っているのは岩ガキです。

生牡蠣と焼牡蠣

漢方医学が発達した2000年前、殻の厚い蠣を牡と考え、殻の薄い蠣を雌と考えたと言われています。
実際には殻の厚みは牡蠣の種類によって異なります。殻の厚い蠣にも牡と雌がいます。

日本の生薬は雌蠣殻

漢方薬として殻の厚い牡蠣、オスの蠣を使用することになっています。
現在の日本の漢方薬では牡蠣ではなく雌蠣、蠣の薄い物を生薬として使っています。

生の牡蠣殻

日本で漢方をしていると、使用する牡蠣は養殖した蠣の殻を乾燥し生で使用するのが当たり前になっています。
日本では生で使用するため、カキ肉のエキスが殻にしみ込んでいます。牡蠣の含有された漢方薬を服用すると、牡蠣アレルギーのある方はアレルギーの症状である蕁麻疹や咳や吐き気などの症状が出る人がいます。

高温で焼く牡蠣殻

牡蠣の修治、加工処理を調べると、高温で焼くようになっています。牡蠣殻が焼けて赤くなるほどの高温ですので1200度程だと考えられます。高温で焼くため牡蠣肉のアミノ酸が炭化されます。アレルギーも出なくなります。
またアミノ酸との結合が無くなるためイオン化しやすく胃での吸収率が高まります。

自分で焼く牡蠣殻

日本では、俢治した高温で焼いた焼牡蠣はありません。太陽堂漢薬局ではフライパンで数時間の乾炒りをして作っていました。しかし高温のため火事の危険性もあり非常に大変だった記憶があります。
その後、上海の漢方メーカーにお願いし牡蠣を800度で焼いていただく契約を結びました。

生牡蠣の副作用

漢方で蕁麻疹や精神不安、性機能回復などに使用する漢方薬に柴胡剤加牡蠣があります。
副作用として血圧上昇や便秘などが現れる事があります。牡蠣がカルシウムですので筋肉の収縮を強めます。カルシウム拮抗剤等の適応である虚血性心疾患には危険です。
大腸や血管の収縮力を強める事が原因です。

柴胡剤加牡蠣ではこの副作用が生じます。
しかし不思議な事に同じ牡蠣が入っている桂枝加竜骨牡蠣湯では副作用の経験がありません。
生牡蠣ではカルシウムによる筋肉収縮が起きるのに、同じカルシウムの竜骨、牡蠣の組合せでは起きません。
竜骨が恐竜やマンモスの化石だからでは。との考えにいつしか至りました。

化石の牡蠣

その頃、私は今から30年程前ですが中国の学会に参加することが多くなりました。
中国に行くたびに生薬市場を訪れるようになりました。
そこで目にする牡蠣は全て化石なのです。しかも化石牡蠣を高温で焼いてあります。

日本のような生牡蠣は探しても無いのです。
漢方薬として日本では海の生牡蠣を使用し、中国では山の化石牡蠣を焼いて使用しているのに驚きと衝撃を受けました。

生牡蠣と化石牡蠣の違いは、塩と岩塩の違いだと思います。土中に在る長い間に、土のミネラルと結合しているのかもしれません。

現在の中国では新しい法律により800度の高温ではなく300度で焼いています。800度以上で焼くと酸化カルシウムになります。300度で焼くと酸化カルシウムと炭酸カルシウムの両成分が含有されるそうです。

生牡蠣と焼牡蠣の使い分け

生牡蠣と焼牡蠣の使い分けですが、五志の憂などの神経症や蕁麻疹、免疫のBセル型などには生牡蠣が効果が早く感じます。
がんなどのTセル型の免疫を上げるには焼牡蠣が効果が高いように感じます。例外ですが紫根牡蛎湯の牡蠣は生牡蠣が良いと思います。